※ピスメ3本・ドリフ4本の144字作文です。



144字掌編集 3




◎PEACE MAKER 鐵

船室からは笑い声が聞こえていた。朗らかな声が一つ、それにつられて皆の声。状況は絶望的だった。仲間の四分の三は死ぬかはぐれるかして、残った者も大抵は重傷を負っていた。それでもこの部屋を訪れた者はみな笑っていた。笑い声に激しい咳の音が混じるまで。「Peace maker」亡き父の言葉がなぜか口をついた。


骸が其処此処に転がっている。嗅覚は麻痺しているが、血と煙と火薬の臭いがまだ立ち込めているのだろう。薩長同盟に始まる政変の帰結である。「これが、平和か?」そこに無い者に問うた。「あんたが作ろうとした平和は、こんなものだったのか?」答えは返らない。「答えろよ、おっちゃん」問う声だけが響いた。


「貴方達は、きっと皆の希望になる」かの病床の人に与えられた言葉の意味が、少しずつ分かってきた。大人達は若年兵を生かそうとしていた。市村鉄之助は課せられた役割を受け入れ、僕は拒んだ。僕らがもたらすのは生き抜く希望なのか安んじて死ぬ希望なのか、それさえも分からないまま。


◎ドリフターズ

ああもう、どいつもこいつも馬鹿ばっか。兄上はちょっとマシかな? 肉親の絆とかこれっぽっちも信用してないだけ。でも、与一はそこが可愛いんだよね。甘っちょろくて、良心なんてもの後生大事に抱えてて。それにさ、超楽しくない? そういう奴に汚れ仕事させて、犯した罪業に絶望して壊れてくとこ見てんの。


並み居る馬鹿共の中でもあれはもうすんげえ馬鹿。ほら、与一がいつも追っかけてる赤い奴。でもこいつ、僕にもできなかったことをやっちゃったんだよね。ねえお前、馬鹿のくせして、一体どんな手を使って与一を調教したのさ。あいつってばすっかり、お前のためなら何でもやらかす立派な人でなしになっちゃって。


「弓取りってのは戦場で人を射殺すのが仕事だろ? それが嫌なら、那須でもどこでも帰れば?」そう言えばお前は、どんな時でも弓を引かざるを得なくなる。いい加減気づくべきだね。お前にとって一番大事なのは、人道でも武士の道でも、他人の命でもない、弓手としての自分なんだってことに。


優れた道具は自ずと美しい姿をとる。名刀はどれも綺麗だろう? なあ与一、知ってるか? お前が一番美しいのは、人を射る時なんだぜ。




 え。えーと、どうしよう……本当にコメント欄に書くことがない……。






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